2021年12月5日(日曜日)
登録有形文化財 駿河亭に泊まる。
有馬温泉の小宿として素泊まりで泊まれる宿の一つに駿河亭(2室)があります。
2020年の春にリニューアルしたのですが、建物の躯体は古く、このたび登録有形文化財に登録される事が決まりました。
【概要】
所在地:神戸市北区有馬町字有馬830
員 数:1棟
登録基準:「一 国土の歴史的景観に寄与しているもの」
所有者:個人所有
建設年代:1926(大正15)年/2020(令和2)年改修
施工主:清水 弥三郎(地元の大工)
建築面積:42.04平方メートル(延床面積:126.12平方メートル)
構造、形式:木造3階建、金属葺、外壁は、杉皮張で化粧垂木(けしょうだるき)【※註6】に杉丸太を用いています。
【歴史と沿革】
・旧駿河屋は、有馬温泉にある元竹細工の工房で、湯本坂に北面して建っています。
・有馬温泉では、古くから竹細工(主に籠)が湯治客の土産物として販売されていましたが、江戸時代末期から昭和初期にかけて、有馬籠が隆盛を極めていました。
・駿河屋は、現在の所有者の祖父にあたる、有馬籠(ありまかご)竹細工職人により、開設されました。
・施工は、地元有馬町内の大工である清水弥三郎で、課税台帳によると、1926(大正15)年に建築されました。
・木造3階建で、建築当初は、1階は工房と台所で、2階は家族用の住居、3階は湯治客用の貸間として使われていました。
・2020(令和2)年に改修を行い、1階を物販店、2階・3階を宿泊施設となっています。
【特徴・評価】
・旧駿河屋のファザードデザイン【※註7】は、杉皮の外壁に現し(あらわし)【※註8】の杉丸太垂木や野地板(のじいた)【※註9】、大きく張り出した勾配の緩い屋根など、当時の数寄屋風普請(すきやふうふしん)【※註10】を感じさせると同時に、2・3階の縁側建具は、一本溝となっており、雨戸を開け放つと外気に開放される構造となっています。
・周辺の旅館やホテル・店舗などが、鉄筋コンクリート造に建て替えられ、古来の有馬温泉の温泉街の景観や風情を失いつつある中で、大正時代から昭和初期の面影を色濃く残した建築物として、貴重な存在といえるでしょう。
【宿泊予約・問合せ】電話078-904-0553